MACHINEは走る芸術 【1992年式 KAWASAKI GPZ900RA9】 整備誌 |
GPZ900R 車体整備 キャリパー・フォーク・スイングアーム編 |
GPZ900R リアキャリパーのオーバーホール
ディスクブレーキのキャリパーピストンってすごく動きが思いモノだと思っていました。単車に乗り始めたのが20歳ですからかれこれ20年以上!そう思っていました。
ところがですよ、ピストンを抜いてオイルシール・ダストシールを交換し、シリコングリースを塗ってピストンを組み付けたらアラ不思議!
足踏み空気入れの圧搾エアーごときでピストンが軽〜く動くではありませんか。
これには大変驚きました。
キャリパーピストンはブレーキフルードの油圧で動くから、ピストンが重くても関係ないものとずっと思っていましたから。
違うんです!軽くピストンが動くと云うことは実際に操作する上で全く違うんですよ。
二輪車のリアブレーキは右足で操作するのですが、ほとんどの人が『ON/OFF』の感覚だと思うんです。フルオーバーホールして動きが滑らかになったリアブレーキは『ジワ〜』って云う操作が可能になるんです!
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2種類のオーリング
レーサーのMACHINEはフリクションロスを嫌います。故に耐久性は考慮されません。しかし市販車はそうはいきません。レーサーのように一度走行したらエンジン分解なんて重整備がされるわけありませんから。
そうなってくると耐久性を考えた造りになるわけで、このキャリパーの『ダストシール』なんかが良い例です。
このキャリパー内にはブレーキフルードが入っているのですがそれが漏れないようにピストンとキャリパーの間に『オイルシール』と呼ばれるOリングが入っています。
レーサーはこれだけです。
でも市販車はブレーキパッドの削りカスなんかでこのオイルシールを痛めでもしたらブレーキフルードはジャジャ漏れ、ブレーキ不能となり大変危険です。
ですから異物がキャリパー内に入ってこないように『ダストシール』があるわけです。
市販車のキャリパーピストンは2枚のOリングによる抵抗を受けて作動しているのです。
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GPZ900R フロントフォークのオーバーホール
何事も初めて行うことは恐怖です。
作業、失敗して組み付けでもしたら・・・恐ろしいです。だからやらない。とはなりません。だからこそしっかり事前勉強して、作業の工程を目をつぶって練習しイメージトレーニングするんです。
まぁ、そうやってやっていくうちにだんだんと色々な作業の勘どころがつかめてきたりするんですけれどね。
ハンドルポスト、トリプルツリーの固定ボルトを緩めてフロントフォークを抜き取ります。
トリプルツリーにインナーチューブが固着していたりしますから『ストン』とは外れません。
フォークトップのキャップボルトを外し、フォークスプリングを抜いて逆さまにしてフォークオイルを抜き取ります。
で、画像は汚れたフォークオイルを抜き取っているところ。
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GPZ900R 汚れたフォークオイル
キチャナイ。このフォークオイルは綺麗なクリヤーレッドなんです。それがなんとも・・・。
フロントフォークは走行中にものすごい仕事をしてくれています。
運転している僕の腕に直接振動がこないように衝撃を吸収し且つ車体重量をさせているんです。
当然フォークスプリングやダンパーカートリッジ内を行き来するフォークオイルは『熱』を発生させます。
当たり前です。運動エネルギーがジュール熱に変換されているだけです。
ですからフォークオイルはこんなに汚れてしまうんです。
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GPZ900R 全てのフォーク部品
一つ一つ丁寧に点検し、磨き上げて並べていきます。
色々な角度からキズの具合なんかをチェックすると不具合箇所も発見できるというものです。
これらの部品が我が愛機を衝撃から守り車体を支えてくれているのです。
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GPZ900R フォーク インナーブッシュ
表面のめっきが剥がれて銅合金の地肌が出ています。
摩耗しているんですが、まだ使用限界値ではありません。でも新品部品に交換です。
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GPZ900R フロントフォークーアウターチューブ
これはフォークアウターチューブを底から撮ったものです。
ドレンボルトを外しているのでフォーク内部が見えています。
内部は綺麗なものです。
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GPZ900R フォークオーバーホール用治具
これはフォークアウターチューブの底にあるドレンボルトを外すための周り止です。
これがないと外せません。
考えて自作しました。
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GPZ900R フロントフォーク オーバーホール完成
新しい部品を組み付けて仕上げたフロントフォークです。
磨き上げて完成です。
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GPZ900R スイングアーム フルオーバーホール
スイングアームを車体から取外し、ピボットベアリングを交換します。
圧入されているので簡単には外せません。
まずはトーチでスイングアームを炙ることから始めます。
ベアリングは鋼、スイングアームはアルミニウム合金です。熱膨張がことなりますので熱をかければ簡単に取り外せます。
とは言ってもやはりベアリングを抜くための治具は必要ですが。
ベアリングの水平を保って抜き取りが出来る治具を造るか見つけるかすればいいんです。
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GPZ900R スイングアーム 研磨
コンプレッサーを使ったベルトサンダーでガシガシ削りまくり。
まずは表面を削ってそれからものすごく大変な手研磨が待っています。
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GPZ900R スイングアーム バフ研磨
どうです?ピカピカでしょう。
耐水ペーパーで各種番手を変えて42時間!
気の遠くなる作業でした。研磨の道は果てしなく遠いんです。でも光り輝くことを知っているから、磨くことが辛くてもやめれません。
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