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MACHINEは走る芸術 【1992年式 KAWASAKI GPZ900RA9】 整備誌
GPZ900R エンジン シリンダーヘッド再分解編
ヘッドカバーを外した#1排気上死点の様子
カムスプロケット【EX】刻印下に線があります。この線がシリンダーヘッド上面と面一にならなければならないのにこのような状態になっています。
これって、バルブタイミングが遅れています。だから圧縮が出ていなかったんです。
カムスプロケットの歯数は34丁、1丁あたり10.58°ですのでこの1丁分ずれています。
もしかしたらバルブがピストンに当たってしまっているかもしれません。これはシリンダーヘッドを取外す必要が出てきました。
どうせシリンダーヘッドを外すのであれば、面研に出すことにします。

もう、開き直りです。徹底的に分解して確認点検しまくってやります!
燃焼室の洗浄
数回火を入れただけでカーボンが付いてしまいます。
ですから洗浄します。
バルブにもカーボンが付着して黒くなっています。
シリンダーの取り外し
もう、ここまできたらシリンダーも抜いてしまいます。ガスケットをケチってはいられません。徹底的に調査が必要ですから!
ピストンにバルブは当たっていないようでまずは一安心です。ピストンリングも全数割れたりしていません。よかった。
燃料リッチだったから簡単に汚れは落ちました。ススが付いていなかったことが間違いの証拠でもあるのですが。ピストンの汚れが拭くだけでピカピカになったことを喜ぶべきか、なんだか複雑です。
まぁ今度は絶対間違えないように組上げます

米村社長にピストンリングコンプレッサーを借りてきてシリンダーを組み付けます。
まぁこの作業もサクっといきます。
シリンダー内壁にオイルを塗って組み付けします。
シリンダーの取付け
シリンダーヘッドを面研してもらうため、千葉県印西市にある【OUT LINE】に出している間、シリンダーはベースガスケットと自重でなじんでくれることでしょう。
シリンダーヘッド面研 0.06mm
戻ってきました!ピカピカに最小面研が施されたシリンダーヘッドが!
これで今までの熱歪みも完全に取れていますから安心して組み付けができます。
カムスプロケットの長孔加工
将来、カムチェーンの伸びでバルブタイミングが遅れた時ようにカムスプロケットを加工しておきます。
バイスにカムスプロケットをくわえ込み、丸棒ヤスリでゴリゴリ削り込みます。削り込むのは回転方向です。
約1.5mm削り込みました。
シリンダーヘッド組み付け・カムチェーンの取付け
ちゃんと【EX】刻印の下にある線とシリンダーヘッド上面と面一になりました。
この状態が本当に正しく再現性があるのか、クランクシャフト端に24mmのメガネレンチを掛けて偶数回回転させます。
何度やってもパルシングローターの1.4Tマークが上死点刻印位置に来たときにカムスプロケットの【EX】刻印線はシリンダーヘッド上面にきます!

でもこれで安心してはいけません。ダイヤルゲージを用いて正確なバルブタイミングをとります。
これで正しい数値がでれば問題ないと云うことになります。
バルブタイミング測定
パルシングローターに米村社長作製スペシャルアダプターを付けその上にタイミングローター(全円分度器)を取付けます。
これで、バルブの開度がクランクシャフト回転角で何度になるのかを調べます。
ヨシムラ製ST-1カムを取付けているのでヨシムラの指示通りの数値になればバルブタイミングは取れていると云うことになります。

まずは正確な#1の排気上死点を出すための測定を行い、0点調整を行います。その後EX側#1バルブリテーナーにダイヤルゲージの測定子を垂直に当てて1mmリフトの値を測定します。それが終わったら今度は同様にIN側の1mmリフトを測定します。

測定の結果は・・・・
ヨシムラが指示する値が全てとれました。これで安心です。
シリンダーヘッド合わせ面からの漏水テスト
これ、ものすごく大事です。
全て組上がって、冷却水を入れたら漏れてきた・・・。先回経験しましたから。
この時点でテストをします。むしろしておかなければなりません。

シリンダーヘッド下面は面研しているので真っ平ら、ここにヘッドガスケットを挟んでシリンダーと密着させているのですが、今回養生のために10日間馴染ませました。でも安心できません。先回は#1と#3の前側から水が漏れましたから。

ですのでドライヤーをこのガスケット位置にあたるようにセットします。このドライヤーの熱を15分掛け、10分放冷この繰返しを6セット実施しました。
熱を掛けることをしないと水が若干漏れてきましたが、この作業を行った後は全く漏水はなくなりました。
熱を掛けることは大事です。

これでエンジンの修正は完了です。後はキャブレターを取付け、エキパイ、ラジエーターを取付ければエンジン始動できます。やっとここまできました。
コンプレッションゲージによる圧縮圧力測定
内燃機関は
 1.良い燃料 2.よい圧縮 3.よい火花
これが揃っていないとダメなんです。

先回、圧縮不足(全気筒5.0〜6.0kg/cm2)でしたから。原因はバルブタイミングの遅れでした。
ピストンが圧縮上死点にあるのに吸気バルブが閉じ切れていないことによる燃焼室密閉度不良。
バルブとピストンが当たっていなかったことは不幸中の幸いでした。

イグニッションコイルを取外し、プラグを外してここにコンプレッションゲージを挿入取付けします。
セルモーターを数回押して、値の最大値を読み取ります。

#1:15.0 #2:14.3 #3:14.8 #4:15.3kg/cm2

ちゃんと圧縮が出ています。これで一安心。
あとはキャブレターを取付け、エキゾーストパイプ、ラジエーター、オイルクーラーを組み付ければエンジン始動してキャブレターセッティングが出来ます。

おおおっと、その前に!焦ってはいけませんでした。シリンダーヘッドガスケットの【馴染み】処理をしなければ!冷却水80℃超→室温まで放冷を3回やらなくては。これをやり損なうとまたまたシリンダーヘッド合わせ面から水が漏れてしまいます。

焦りは禁物です!!!!!
エンジン火入れ、ガスケットの熱変形
兎に角エンジンを始動させること!ガスケットの熱変形が最重要課題ですから。

エンジンは一発始動してくれます。問題はこの先、ちゃんとアイドリングし続けてくれるのかどうかです。もう、ヒヤヒヤドキドキです。途中ストールしやしないか、『プシュー』なんて音を出して冷却水が燃焼室内に入り込んだりしないか。

アイドリングは安定しています。徐々に油温・水温ともに上昇していき遂に目標の80℃に達しましたのでエンジンは停止します。ここからゆっくりと室温まで放冷させます。

水温が下がった後にラジエーターキャップを外して、減った分の冷却水を追加します。シリンダーヘッドは複雑な冷却経路をしているのでそう簡単にはエアーは抜けません。ですから水位はエンジン掛けるたびに減ります。

これを3回繰返すとガスケットがしっかりと馴染んでくれますのでもう大丈夫。
次は冷却経路のエアー抜きです。ファンが回転してラジエーターキャップの圧力弁が開くまで水温を上げるとエアーが抜けてくれます。
このMACHINEは水温110℃でファン始動なので、またまたドキドキヒヤヒヤしながら水温計とにらめっこ。
うまいことファンが始動したのでエンジン停止、放冷させます。これを2回行ってエアー抜き完了です。
オイル点検窓からの様子
このオイルはMOTUL 4T FACTORYLINE 10W-40なので綺麗な緑色透明です。
冷却水が混じってカフェオレ色になってしまった時は目眩がしましたよ。ようやくここまで来ました。オイルは綺麗な状態です。

これでキャブレターセッティングが開始できます。

念のためにキャブレターは実油面を測定・調整し、メインジェットをK150・ジェットニードルクリップ段数を上から3段にしました。
1/8急開→閉を行った時タコメーターの指針ではわからないくらいエンジン回転音が僅かに落ちますから、アイドリングアジャスターでアイドリング値を僅かに上昇させ問題解決。
プラグ先端色がやや煤けていたので、パイロットスクリューの戻し量を2 1/2に絞りました。
室温25℃、湿度45%の状態でのセッティングです。

実走行する前にブレーキキャリパー、ブレーキレバー、サスペンションなどをチェックします。
これが完了したらいよいよテスト走行に出ることができます。
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